ラグビーの構造化トレーニング
「練習はラグビーで起こる現象を切り取って練習していく」というのを良く聞くことがある。ラグビーではトップスピードで走ることがあるためラインに1列に並び笛の合図で一斉に数メートルトップスピードで走る練習をする。ジョグで走ることもありグラウンドの周りにコーンを置く、いわゆる外周というようなフィットネス練習があります。それ以外にもパスやキック、そしてコンタクトがあり、ラグビーはコンタクトスポーツなので筋力が必要になります。そのため筋力向上に特化したウエイトトレーニングを行っているチームが多くあります。
つまりこれからはスピード・技術・筋力などにラグビーの要素を分けた、要素還元トレーニングの考え方から生まれた練習の組み立てになります。
要素還元トレーニング
フィットネスを高めるためにグラウンドの周りを走ったり、またはラインに並んで笛の合図で走る練習があります。このメニューではラグビーで起こる現象を極端に削り、フィットネスにフォーカスされたものになります。そのためフィットネスを高める以外のフィジカルや思考が削ぎ落とされるのでトレーニングとしては最適になります。またドリルでの3vs2の練習などが当てはまり、ラグビーで必要なシーンを切り取って練習を組み立てていく考え方が要素還元トレーニングになります。
ラグビーはキックオフの瞬間からわからない
ラグビーだけでなくスポーツ全般的に言えることですが、ゲームは試合前の想定と大きく異なることが多く、プレーも予想できないことが多いため複雑系と言われています。つまりキックオフから1秒後の世界は誰も予知できないということです。しかし、この予知できないということはわかるので、練習もできるだけわからないことはわかっているといった部分を踏まえていく必要があります。
構造化トレーニング
要素還元トレーニングと対する考え方が構造化トレーニングになります。全体論とも呼ばれ、カオスの考えも含まれています。ラグビーのゲームでグラウンドの周りを走ったり、笛の合図で決まったコースを走ることはないのでそもそも分けることが必要ないという考え方です。近年ではこちらの考え方が主流になってきており、ルールの制約を設けて引き出したい現象を求めていく、ゲームセンスという考え方や、複雑系を意識した練習の組み立てになります。ウエイトトレーニングについても、ラグビーではベンチプレスを上げないなので、意味がないと考えられており、ベンチプレスをやることはベンチプレスの筋力向上にはなるがラグビーの筋力向上にはならないという原理主義の考え方もあります。要素還元トレーニングでのスタートが決まっている3vs2を行うことは無意味で、3vs2はBDの位置、自身・味方のポジショニングまた防御のポジショニングは毎回違うといったこと前提に練習メニューを組み立てていきます。
スピード
要素還元からのスピードの定義は50mを何秒で走ったとか持久走が何秒早くなったというタイムを指標にスピードを考えます。つまりスピードが1秒早くなればフィジカル的には結果が出ており、評価の対象になります。足が早いことにこしたことはありませんが、構造化の考えではある選手が他の選手より50mが1秒遅くても、他の選手より1秒早く状況に判断できてアクションできているならスピードは変わらないといういうことです。つまり50mのスピードはA選手はB選手より早いという相対的な評価になります。ラグビーではある選手より足が早いということよりもラグビーのゲームにおいて正しいタイミングで正しい判断ができ、プレーできているかが重要になります。
要素還元トレーニングはダメなのか?
要素還元トレーニングは意味がないということにはなりません。バランスが大切になり、要素還元トレーンングではゲーム中心の練習ではない、「再現性」を著しく高めることができます。複雑系を意識して練習を組み立てていくことが大切にはなりますが、要素還元トレーニングの要素も入れていくことも大切になります。